国語・古典(愛知県高校入試)
家居のつきづきしくあらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど、興あるものなれ。よき人ののどやかに住みなしたる所は、さし入りたる月のA色も、ひときはしみじみと見ゆるぞかし。今めかしくきららかならねど、木だちものふりて、わざとならぬ庭の草も心あるさまに、簀子、透垣のたよりをかしく、うちある調度も昔覚えて安らかなるこそ、B心にくしと見ゆれ。
〔現代語訳〕住居が( C )望ましい状態であることは、この世における一時の宿とは思うけれども、おもしろいものである。身分や教養のある人がゆったりと住んでいる所は、さし込んでいる月の( D )も、一段としみじみと見えるものだ。現代風でなく華美ではないが、木立が何となく古びて、特に手入れをしたわけでもない庭の草も趣のある様子で、ぬれ縁や、間を透かして作った垣根の配置もおもしろく、何ということもなく置いてある道具類も古風な感じがして落ち着いているのは、( E ) と思われる。
〔解説〕 筆者は、この文章において、おもに住む人と住居のあり方について自分の ( F ) を述べている。
(一) @つきづきしく の現代語訳として( C ) にあてはまる最も適当なことばを、次のアからエまでの中から選んで、そのかな符号を書け。
ア よく調和がとれていて イ まさに華麗であって
ウ 優れた評価が定まって エ とても素朴であって
(二) A色 の現代語訳として( D )にあてはまる最も適当なことばを、次のアからエまでの中から選んで、そのかな符号を書け。
ア 雲 イ 面 ウ 形 エ 光
(三) B心にくし の現代語訳として( E ) にあてはまる最も適当なことばを、次のアからエまでの中から選んで、そのかな符号を書け。
ア もの寂しい イ 不思議だ
ウ 奥ゆかしい エ 気の毒だ
(四) ( F ) にあてはまる最も適当なことばを、次のアからエまでの中から選んで、そのかな符号を書け。
ア 現実 イ 理想 ウ 目的 エ 手段
解けましたか?それでは解答です。
(一) ア (二) エ (三) ウ (四) イ
(一) 「つきづきし」とは、「いかにもぴったりしていて、しっくり調和している感じ」。文章全体の内容からも判断はできる。
(二) 月は明るく輝くので「月の色」というのは「月の光」を指す。
(三) 「にくい」という言葉が使われているが、「こころにくし」でよい意味に使われる。
(四) 作者である吉田兼好が「こうあるといい」と感じている住居のあり方について述べている。