国語・古典(岐阜県高校入試)
次の文章は漢文を書き下し文にしたものである。この文章を読んで、後の問いに答えなさい。ただし、問いの都合上、漢文(原文)のままの部分がある。
楚人に江を渉る者有り。その剣、舟中より水に墜つ。にはかにその舟に契みて曰はく、「これ我が剣のよりて墜つる所なり。」と。舟止まり、その契みし所の者より、入水求之。舟はすでに行けども、剣は行かず。剣を求むることかくのごときは、また惑ひならずや。故法をもつてその国を為むるは、これと同じ。時すでにうつれども、法はうつらず。これをもつて治を為すは、豈に難からずや。
(注) 楚人=楚の国の人。 江を渉る=(舟で)大きな川を渡る。 墜つ=落ちた。
その舟に契みて=その舟(の縁)に目印を付けて。 よりて墜つる所なり=落ちた場所である。
その契みし所の者より=目印を付けた所から。 かくのごときは=このようなことをするのは。 故法=昔の法律。
為むる=治めること。 治を為す=国を治めること。 豈に難からずや=なんと難しいことではないか。
問一 にはかに を現代仮名遣いに改め、すべて平仮名で書きなさい。
問二 入水求之 は「水に入りて之を求む」と読む。このように読むことができるように返り点と送り仮名を付けたものはどれか。適切なものを、ア〜エから選び、符号で書きなさい。
ア 入水二求之一 イ 入二水求一之 ウ 入レ水レ求レ之 エ 入レ水求レ之
問三 また惑ひならずや とは、「なんと愚かなことではないか」という意味である。どのようにすることが愚かなことであると述べているのか、四十五字以内でまとめて書きなさい。ただし、「大きな川」、「舟」、「剣」という三つの言葉を使うこと。
問四 この文章で述べられている筆者の考えと合っているものはどれか。適切なものをア〜エから選び、符号で書きなさい。
ア たとえ世の中が移り変わったとしても、法律というものは変えてはいけないものである。
イ 古い時代の法律の中にこそ、新しい時代に国をよりよく治めるのに適したものがある。
ウ 新しい時代に適した法律は、世の中が移り変われば自然にできてくるものである。
エ 世の中の移り変わりに応じて、それぞれの時代に適した法律で国を治める必要がある。
解けましたか?それでは解答です。
問一 にわかに 問二 エ
問三 (例)大きな川を渡っている舟から水中に落とした剣を、舟に付けた目印を手がかりにさがそうとする(こと。)
問四 エ
【現代語訳】
楚の国の人に舟で大きな川を渡る者がいた。その人の剣が舟中から川へ落ちた。急いでその舟(の縁)に目印を付けて言うのには、「ここは私の剣が落ちた場所である。」と。舟が止まり、目印を付けた所から、川に入り、剣を探した。舟は既に進んでいたが、剣は動いていない。剣を探すのにこのようなことをするのは、なんと愚かなことではないか。昔の法律でその国を治めるのもこれと同じである。時代はすでに移っているのに法は変わっていない。このようにして国を治めるのはなんと難しいことではないか。