国語・古典(宮城県高校入試)
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
ねたきもの @人のもとにこれよりやるも、人の返事も、書きてやりつる後、文字一つ二つ思ひなほしたる。とみの物縫ふに、かしこう縫ひつと思ふに、針をひきぬきつれば、はやくA尻を結ばざりけり。また、かへさまに縫ひたるも、ねたし。
(「枕草子」による)
注 とみの 急ぎの
かしこう うまく
はやく 何とまあ
かへさまに 裏返しに
問一 右の文章中の「人のもとにこれよりやるも、」とは、「人のところにこちらから送るのでも、」という意味ですが、何を送るというのですか。最も適切なものを、次のア〜エから一つ選び、記号で答えなさい。
ア 衣服 イ 道具 ウ 手紙 エ 日記
問二 右の文章中に「A尻を結ばざりけり。」とありますが、何の「尻」を「結ばざりけり。」であったのか、漢字一字で答えなさい。
問三 右の文章に述べられている作者の心情として、最も適切なものを、次のア〜エから一つ選び、記号で答えなさい。
ア 自分ではよいと思ったことを非難され、腹立たしく思っている。
イ 自分がついうっかりして失敗したことを、腹立たしく思っている。
ウ 自分の贈り物に心をこめることができず、腹立たしく思っている。
エ 自分の期待していた書物が手に入らず、腹立たしく思っている。
解きましたか?それでは解答です。
問一 ウ 問二 糸 問三 イ
【現代語訳】
いまいましいもの、(それは)人のところにこちらから(手紙を)送るのも、人への返事も、書いて出してしまった後で、文字の一つ二つを(まちがっていたと)思いついたこと。(また)急ぎの物を縫う時に、うまく縫ったと思うのに、針を引きぬいたら、なんとまあ、糸のはしを結んでいなかったことよ。また、裏返しに縫ってしまったのも、しゃくである。
問一 直後に「(人の)返事」とあることから、ウの手紙のことだとわかる。
問二 縫い物をしていて、針を引きぬいた時のことである。糸のはしを玉結びにしていなかったため、針を引きぬいたとたん、せっかくうまく縫えたはずの所から、すっかり糸がぬけてしまったというのである。
問三 手紙の中の誤字にしても、糸のはしを玉結びにしていなかったことにしても、ついうっかりした失敗である。そういうことについて作者は「ねたし(しゃくである、いまいましい)」と、腹立たしく思っているのである。なお、『枕草子』は、平安時代に清少納言によって書かれた随筆である。