国語・古文(北海道高校入試)
腑のぬけたる仁に海老をふるまひけるが、赤きを見て、「これは、生れつきか、また朱にてぬりたる物か」と問ふ。「生得は色が青けれど、釜にて煎りて赤うなる」といふを合点しゐけり。ある侍の馬にのりたる先へ、二間まなか柄の朱鑓二十本ばかり持ちたる中間どものはしるを見、手を打つて、「さても世はひろし。奇特なる事や」と感ずる。「なにをそなたは感ずるや」と問ひたれば、「その事よ。いまの鑓の柄の色は、火をたいて剥いたものぢやが、あれ程ながい鍋がようあつた事や」と。
(注) 腑のぬけたる仁 まのぬけた人 ふるまひけるが ごちそうしたが 生得 生まれつきの性質 釜 鍋の一種 煎りて 煮詰めて 二間まなか柄の朱鑓 約四・五メートルの赤色の柄のやり
中間ども 家来たち 奇特なる事 めったにない珍しいこと
問一 線1「ゐ」は、五十音図の何行何段ですか、例にならって答えなさい。
例「せ」 サ行エ段
問二 線2「打つて」は、誰の動作を表していますか、ア〜エから選びなさい。
ア まのぬけた人 イ 海老をごちそうした人 ウ 馬に乗った侍 エ 家来たち
問三 次の文は、この文章のおもしろさについて説明したものです。本文中から @、Aに当てはまる部分を、それぞれ書き抜きなさい。ただし、@は十字、Aは十五字とします。
まのぬけた人が、はじめは青かった海老が「 @ 」という話を聞いて、柄が赤い鑓を見た時に、珍しいことだと早合点し、「 A 」と感心したこと。
解けましたか?それでは解答です。
問一 ワ(行)イ(段) 問二 ア 問三 @ 釜にて煎りて赤うなる
A あれ程ながい鍋がようあつた事や
【現代語訳】
まのぬけた人に海老をごちそうしたが、(その海老の)赤いのを見て、「これは生まれつきか、または朱の色でぬったものか?」と問う。「生まれつきの色は青だが、釜で煮詰めて赤くなるのだ。」と言うと、納得していた。ある侍が馬にのっている前で、約四・五メートルの赤い柄のやりを二十本ほど持った家来たちが走っているのを見て、(このまのぬけた人が)手をたたいて「それにしてもこの世は広いものだ。めったにない珍しいことだ。」と感心している。「なにをあなたは感心しているのか。」と聞くと、「そのことですよ。今見たやりの柄の色は、火をたいて剥いたものだろうが、あれ程長い鍋がよくあったことだと感心しているのです。」と。